ペギー・スーの結婚の噂

そうだなあ、博士は、火星にいたことがあるというから、きっと持っているとおもうが、はっきりしたことはしらない」
「先生、こんなことは、ないでしょうか。火星へついて、博士だけが下へおりて、いってしまう。あとに、先生とぼくとは、いきがくるしくなって、死んでしまう……」
「そんなことがあっては、たまらないね」
 と、先生は、ちょっと顔をくもらせたが、
「あ、そうだ。わたしたちの前にもう一人、火星へいっている男がいるのだよ。あの男はどうしたかしらん」
「へえ、ぼくたちの前に、火星へいっている人があるのですか。だれです、その人は……」
 と、千二少年は、おどろいた。
「それはね、佐々刑事だよ。警視庁にいた元気のいい刑事さんだ」
 と、新田先生は、説明した。
「ああ、あの人ですか。山梨県の山中で、火星の宇宙艇をうばって、逃げた人でしょう」
「そうだ、あの人だ。一時は、佐々刑事の無電がはいったものだが、このごろしばらく佐々刑事から、たよりをきかない。今どうしているのだろうか。おお、そうだ。この受信機で、佐々刑事の電波をさがしてみよう」
「それがいいですね」
 と、千二も、さんせいした。
 そこで、新田先生は、受話機を頭にかけ、受信機をはたらかせてみた。そうして、この前うけた時におぼえた波長のところへ、目盛盤をまわしてみた。
「どうですか。はいりますか」
「いや、きこえないね。このへんで、たしかにきこえたはずだが、今日は、ぴいっという、うなりの音も出ない」
 新田先生は、さらに、増幅器を加えたりしたが、空間は、寝しずまったようにしずかであった。

朝血圧