エフェ研究所の説明・紹介
いや、いた。氏は博士親子がもたれている太い樹のうしろに、腰をぬかさんばかりにがたがたとふるえていた。紙のように白い顔、丸い頭といわず額といわずくびといわずふきだしている大粒の汗は、水をかぶったようであった。
玉太郎は、気が遠くなりかけて、はっとわれにもどった。
いったいこれはどうしたのか。
「うわーッ」
玉太郎は、その場の光景に気絶しそうになり、自分でもどうしてそんな声が出たかと思うほどのすごい金切り声を発した。
でも、誰だって、これを見れば、金切り声を出さずにはいられないだろう。だって、沼の中からぬっと恐竜が長い首をつきだして、もう一息でツルガ博士やネリをぱくりとのんでしまう姿勢をとっているのだった。
そこへ玉太郎が金切声を発したものであるから、恐竜の耳にもとどいたと見え、恐竜はくるっと首を横にまげて、玉太郎をきっとにらんだ。玉太郎は、氷の雨を全身にあびたように、がたがたふるえ出した。
が、ここで気絶しては、自分が背負っている重大な義務がはたせないと思いなおして、けんめいにこらえた。
「今だ。早くにげなさい。ツルガ博士。ネリーさーん」
玉太郎は、全力をあげて、やっとそれだけのことをいった。
と、恐竜はとつぜんどぼんと、沼の中に姿を消してしまった。
沼の表面には、はげしい波紋が起って、岸のところへ波がざぶりとうちあげた。
竪琴が急調をふくんで鳴りひびいた。ツルガ博士の手が、竪琴の糸の上を嵐のようにはしっているのだ。
ネリが、父親の博士にだきつくようにして、その耳に何かささやいている。
そのとき玉太郎は、とつぜん大きな身体にだきつかれた。